NIRL GIRL 「A.D.2010〜相対的世界崩壊元年〜」 インタビュー

004_a


多様な音楽性の中にヒリヒリとした狂気を孕んだ4ピ−スバンド「NIRL GIRL」。彼らから届いた1stミニアルバム『A.D.2010〜相対的世界崩壊元年〜』は、その日本人離れしたスケール感に、新しい時代の息吹を強く感じる大傑作。




―本作のタイトル『A.D.2010〜殺戮と破壊、忘却とほんの少しの希望〜』色々と意味が込められていそうですが、どのように付けられたんですか ?

吉野豪史(Vo,G):題名を記号形式にしたくて、色々とメンバーや事務所の人達と話し合った結果、『A.D.2010』に決まりました。普通に読むと西暦2010なんですけど、他にもAにはAttitude(姿勢)やAbstract(抽象的)、Against(反対要旨)等、DにはDistract(そらす)やDay(日々)、Distort(歪み)等、今後のNIRL GIRLの音楽性の予測も含め、ある意味、造語にもなってますね。サブタイトルの『相対的世界崩壊元年』は知り合いのクリエーターの方に音源を聴いてもらい、20通りくらいサブタイトルを作ってもらい、その中から一番しっくりくるのをメンバーで選びました。

―歌詞もすごく哲学的で、具体的な表現を用いず聴き手にイメージを抱かせるような作り方が印象的でした。

吉野:感じてもらった通り、具体的な表現を用いず聞き手にイメージを抱かせる事、これがまさに1番大事にしてる事です。俺は小説家ではなくあくまでミュージシャンなんだと考えています。小説家はその場面を丁寧に描写した言葉で、悲しみや喜びや、要するにその場の空気なんかを表現します。ミュージシャンは、悲しみや喜びや、その場の空気を歌詞だけでイメージさせるのではなく、メロディーだけでイメージさせるのではなく、そのミュージシャンが奏でる音楽でイメージさせなきゃいけないじゃないのかなと、生意気にも考えています。勿論、色んなタイプのミュージシャンがいると思いますが、俺はそう考えてます。そして意識してる事は絶対に押し付けない事。簡単に言ってしまうと、「これは絶対にこうなんだ!」って絶対に言わない事。プラス遊び心とユーモア。

―疾走感や浮遊感を感じたり、曲ごとにカラーが色々あって聴き応えがありました。総じてライブ感に重点を置かれているようにも感じたのですが、曲はどのように作られるんですか ?

吉野:まずは俺が骨組みを作り、その曲をメンバーにスタジオで聴いてもらい、メンバーみんなで肉付けしていく感じですね。今回のアルバムに納めた6曲は、これまでライブでやってきた曲だったので、ライブ感に重視した曲に聴こえて間違えはないと思います。勿論、今後それを打破出来たらとも思っています。演奏の際に意識してる事は、全て捨てる事。これはギターの田村から教わった事で、演奏するまではたくさん色んな事、要するに迷いや、不安や、期待や、ある種のストーリーを描いて演奏に臨むのだけれど、いざ演奏する時には全て捨てて無になる。色んな事を考えてたからこそ無になれるし、無になった時に意味が出るのではないかと思っています。

―今作はプロデュースをthe primroseの松井啓治さんが担当されていますね。一緒にやってみていかがでしたか?

吉野:メンバー全員とても良い経験が出来たと思っています。松井さんがNIRL GIRLというバンドに対するイメージも良く分かったし納得も出来ました。最初は松井さんに構えてた節はあったのですが、すぐに打ち解けあう事が出来ました。松井さんが俺らに歩み寄ってくれたからです。しかし決して松井さんが甘い訳ではなく、実際ここまで音楽にストイックな人は俺自身本当に見たことはなかったし、メンバーもそれを感じたんだと思います。そんな松井さんに音楽で答えたかったんだと思います。やり甲斐は本当にありました。勿論、疲れもしましたが(笑)。

―計6曲のレコーディングに3ヶ月もの期間を要したと伺いましたが、こだわった点や、苦労した点は?

吉野:俺ら自身もまさかこんなに長くなるとは思ってなくて、確かにこだわった事とかはいっぱいあったのですが、誰よりも1番こだわったのは松井さんでした(笑)。それに寝る間も惜しんで死ぬ気でついていったのが今回のこだわりかも。そしてそれが苦労でもありましたね(笑)。

伊藤真紗世(B,Vo):レコーディング前に、NIRL GIRLのこれまでの4年間で得たこだわりや思考を持って、松井さんに挑んだつもりだったのです。しかし実際、レコーディングが始まって1時間くらいで、装備も武器も無くなってしまった。というのが正直な所です。1曲1曲の自分たちがこだわりたい所は、松井さんは話さなくてもわかってくれていて、音で会話しながら作れたというのは、松井さんプロデュースでなければできなかったと、とても感謝しています。




嫌悪感を感じさせられるくらい、
刺さる作品になったと感じます。





―1曲目『sadistic youth』には、そのタイトルや歌詞、演奏などを通して、若さ故の衝動や危うさのような物を感じ取れたのですが。

吉野:この曲が出来たのが確か6年くらい前で、今回アルバムの中でも最近のライブで演奏してる中でも多分1番古い曲です。この曲が出来た時に、自分の中の何かに手応えを感じたのを今でも覚えています。いい意味で革命みたいな物が俺の中で起きたんでしょうね。当時の俺は何もかも、本当に何もかもを壊したくて、まぁ結局何も壊せなくてイライラしてたんです。勿論今だって毎日かなりイライラしてるんですけど(笑)。そんな中sonic youthってアーティストに初めて出会って、かなりの衝撃とダメージを受けたんすよ。忘れないのが、あまりの衝撃とダメージで次の日バイト休みましたからね。そして震える手の中ギターを弾いて出来上がったのが『sadistic youth』です。俺の中でこの曲は不完全なんです。美しい所も醜い所もいっぱいあるんです。でも直せないし、直したくない。何か人間らしい、もしくは人間くさい曲なんじゃないかと勝手に思ってます。

―他の曲にも共通して感じたのですが、確かな表現力と安心感のあるバンドのサウンドを田村さんのギターが若干壊すというか、アグレッシブな方向に引っ張っていく役割を感じたのですが?

田村光(G):確かに、リードギターの役割は、日本画で例えると、仕上げにつける濁った色合いによる影や反射みたいなものに似ているだろうし、アグレッシブな方向に引っ張っていく役割と感じて頂いたというのは、その通りだと思います。とにかく演奏のストーリーをギリギリまで選ばない、ミラクルの可能性探し的なスタイルだし、その分リードギターはタテに対して置いていく感覚になりがちなので、だからこそ逆に、強引に、“置く”というより、“投げる”にしてます。その感覚がそういう印象を与えているのかもしれません。

―アコースティックな印象の『風』や、今作の1つの山場とも言える壮大なサウンド『color』など、攻撃的なロックサウンド以外の楽曲も印象に残りました。

吉野:メンバー内で収録曲の話合いをした時は、どちらの曲も今回のアルバムには入れる予定はなかったのですが、松井さんや事務所の人達と収録曲の話し合いをしてる時に、仄かでもいいからある種の光がほしいかもって話になり、この2曲を追加する事になりました。どの曲もメンバーに肉付けしてもらう前に俺のイメージがやっぱりあって、いい意味でそれを全く崩してくれるメンバーの感性があって、その2つははじきあったり引き合ったりして曲が完成されていくのだけれど、『風』に関しては俺のイメージ通り、まぁ全くイメージ通りではないけど、イメージにかなり近い曲になりましたね。しかも今回はそこにプロデューサーの松井さんが入っても、初めのイメージからあまりぶれなかった。だから不思議な曲です。

伊藤:NIRL GIRLの攻撃的な曲や、ライブ感などとは確かに色が違いますね。曲は古い方ですが、まさかCDに入るとは思っていなかった為に心の準備も含め、レコーディング中も結構迷い込んだりしました。ライブ感へのこだわりは元々ありますが、せっかくパッケージングされるのなら、こだわりだけではなく、逆にピアノの音を重ねてみたり、調理方法を少しだけ変えた所があります。どの曲を作るときもそうですが、NIRL GIRLはメロディーや雰囲気、曲の第一印象やそれぞれの感性、歌声、これらをお互い予測して、歩み寄るように音にしていきます。だから、私が歌うということで、メンバー三人の私の印象が、『color』には出てるのではないかな…とおもうのですが…どうでしょうね。自分を客観的にも見れて、とても楽しく、幸せな時間でもありました。

―他、特に思い入れのある曲やメンバーさん自身が思う聴き所はありますか?

吉野:俺の思い入れのある曲はさっきも話しましたが『風』ですかね。今回レコーディングするとは思わなかったし、出来上がった音にも満足しています。不思議な話、ある意味でありがちな話なんですが、今回の八ヶ岳のレコーディングスタジオで泊り込みのレコーディングで、『風』のレコーディングしてる時にとてつもなく強い風が外で吹いていて、森がすごくざわめいていて、雰囲気がばっちりでした。あの風景を見たら、やはり気持ちが入りましたね。

折橋豪(Dr):『真昼間』は疾走感溢れる曲で個人的に好きですね。『風』は緑の草原を眺めながら聴いて欲しいです。

伊藤:何度も聴いているのですが、生活の中でマイブームが変わるのです。三日おきくらいに。全曲、思い入れがあるんですね、しいて言えば、『Silentboy Silentgirl』です。ヒデくんの歌い方が素敵です。

田村:個人的にはたくさんあります。ボーカルの見せ方でも、例えば1曲目『sadistic youth』は、僕達の感じるポストパンクらしさである、声の“軽さ”や“不安定さ”を吉野は上手く出せたと思います。青さと冷めた反抗ですから。シーンを知れば、見える聞き方ってあるのですが、押し付けにならないよう、それが伝わっていく事を僕達は望んでいて。上手かつ太い声が良いという一般的な概念に対し、ポストかつパンクに反抗して歌いあげた曲になったと思います。吉野の大事にしている、シーンが伝われば嬉しいです。『sadistic youth』が大きく“グランジ”になりすぎないよう、ギターアンサンブルは他の曲よりもより繊細に出来たと、個人的に感じます。また、ノイズの中にもストーリーを持つ、それが僕の大きなテーマでもあるので、そういった意味で、ノイズワークの続く『sadistic youth』や『8』は、ノイズの部分のテイクが最も多く、ストーリーが奇抜なテイクが録れたので、ぜひ聴いて欲しいです。また、“弾いてるけど聞こえない、弾いてないけど聞こえる”=リスナーに演奏させる、これも僕の大きなテーマのひとつで、布石のループを作ること、トニックに対して1度でアテていく事、etc。そういう細かい作業でやっと生まれる弾いてないのに聴こえちゃう音。リスナーの脳が勝手に弾くんですよね。わかり易いところでは、「真昼間」のサビで、弾いていないはずのギターの高域のシロタマを表現できた所、3曲目『Silentboy Silentgirl』の伊藤のベースライン前後の時間軸で、5曲目『color』のAメロで弾いてないはずの低域のギターなど、個人的に聴き所です。

―今回の6曲、1枚のアルバムとして、メンバーさんにとってどんな作品になりましたか?

吉野:NIRL GIRLの、とても大きな第一歩。そしてこのアルバムが完成できた事を、ずっと忘れてはいけないと思う。

折橋:このアルバムは今のNIRL GIRLが世の中に伝えたいことがたくさん詰まっている。ライブとは違い様々な環境でこのアルバムを聴いてもらうことになると思うが、それぞれが感じるストーリーがあり、それぞれが色んな捉え方をすると思う。新しいストーリーを見つけたくなったらLIVEを観て欲しい。必ず新しいストーリーが見えるはず。

伊藤:今までも音楽を本気でやって来ましたが、ここからが本当の音楽人生だな、と思います。この作品からスタートをきる。こんなに素敵なこと、一生忘れられません。

田村:嫌悪感を感じさせれるくらい、刺さる作品になったと、感じます。

―最後に、今後の目標や野望、読者に対するメッセージがありましたらお願いします!

吉野:今は出来るだけ多くの人にこの『A.D.2010』を聴いてもらいたい。そして気に入ってもらえたらライブに来てもらいたい。本当にそれだけです。

折橋:今回の『A.D.2010』をこれまでNIRL GIRLを支えてくれた人もまだNIRL GIRLのサウンドを聴いたことのない人にも全ての人に聴いて欲しい。

伊藤:1枚のアルバムの中に、いろんな色がつまっている。CDを聞いて興味を持ってくれたら、ライブに来て欲しい。ライブに来て頂いたら、もっとたくさんの色や面白さを感じてもらえると思います。

田村:アルバムには絶対に入らない答えが、ライブにあります。本当です。是非見に来てください。

(interview:小林博之)


004_j

ALBUM
「A.D.2010 〜相対的世界崩壊元年〜」
2010.8.4
SOULM-004
http://www.nirlgirl.com/


※この記事は、UNGA! No.132(2010.8.31発行)に掲載されたインタビューに、誌面に収まり切らなかった文章を追加し再構成した物です

Saori@destiny 「WORLD WILD 2010」 インタビュー

003_a


バイレファンキやファンキー・コタなど、海外直輸入のダンスサウンドをいち早く取り入れ制作されたSaori@destinyのニューアルバム『WORLD WILD 2010』。“ワールドワイド”かつ“ワイルド”な、J-electroミュージックの最新型がここにある!!




―Saori@destinyさんといえば、エレクトロを基調としたクラブサウンドでこれまでもご活躍でしたが、今回はまた思い切った内容ですね!

Saori@destiny:はい(笑)。2010年を象徴する“ワールド”をテーマにして、バイレファンキやファンキー・コタなど海外ダンスシーンの音を取り入れて。

―その辺りのジャンルって、ブラジルやインドネシアといった発祥の国でもさらに庶民を中心に盛り上がっているような特殊な音だと思うんですが。

Saori@destiny:日本人で、しかも女性アーティストでやってる人っていうのがあんまりいないじゃないですか。サブカル的にも、みんながやってない事をやるってのはオイシイかなって。

―確かに他にいないですよね。

Saori@destiny:でもこれがすごく大変だったんですよー!今までの歌い方と全然違うので。海外の女性アーティストでバイレファンキもやっているM.I.A.の歌い方なんかを参考にしたんですが、すごい低くてガラの悪そうな声だったりして(笑)。自分で出すのはとても苦労しました。

―これまでとは真逆ですもんね。

Saori@destiny:そうなんですよ!今まではサラッと、なるべくきれいな声で歌うっていうのが基本だったので、新しいヴォーカル・スタイルが「全然出来ない!」みたいな。

―歌詞も全部Saori@destinyさんが書かれているんですよね?

Saori@destiny:はい。曲のアレンジがおおよそ固まった段階でもらって、聴きながら歌詞を付けるんですけど。

―例えば『WORLD WILD 2010』なんてすごく変則的でアッパーな音で、「歌詞を付けろと言われても…」とか思いませんでしたか?

Saori@destiny:そうそう(笑)。最初はこういう曲に歌詞を付けた事ないから悩んだんですけど、発音や響きを重視してみたら他の曲よりも意外に簡単に出来ました。だから、全然意味がないって訳じゃないんですけど、それよりはノリを優先して。

―その割には、例えば〈イメージはリメイクで it's ok〉という歌詞や、英語でたたみかける所なんかも、バイレファンキというジャンルの本質を突いている気がしましたが。

Saori@destiny:本当ですか!?あんまり深く考えないで書いたんですけど(笑)。キャッチーにしたかったからカタカナ英語取り入れたりしてみました。

―歌詞の世界にも何パターンかありますよね。『エスニック・プラネット・サバイバル』や『Play』なんかはすごく過激な内容で驚きました。

Saori@destiny:現代の若者のリアルな現状みたいな。全員がこうじゃないですけど、ちょっと危ない若者の(笑)。今、携帯小説が流行ってるじゃないですか。彼氏がサイテーで、とか、ホストに貢いでる女の子の話とか、援助交際とか、そこら辺も参考に物語を作ってきました。

―自分で物語を組み立てていく作り方は多いんですか?

Saori@destiny:そうですね。自分の気持ちを書いてみた事もあったんですけど、私よく何考えてるか分かんないって言われるんですね。しかも自分でも何考えてるかよく分かんない時があるので、歌詞にすると本当に何が言いたいのか分からなくなっちゃって(笑)。物語にした方が情景も見えるし意味も分かるんです。

―(笑)。自分の気持ちを伝えたい!という時もあるんじゃないですか?

Saori@destiny:でも、こういう状況だったら私はこう思うだろうなっていう部分はどの曲にも入ってるんです。例えば『I can't』は初めて失恋の歌詞を書いた歌なんですけど、レコーディング中も歌ってると辛くなってきて、泣きそうでしたもん(笑)。

―言われると、歌い方にもそんな雰囲気が感じられました。

Saori@destiny:そうなんですよ!今までの『JAPANESE CHAOS』とか『sakura』とか、全部抑揚を付けずに、感情を込めずにサラッと歌っていたんです。でも『I can't』では歌い方を変えてみました。もう感情をめっちゃ出して!

―DJ JET BARONGによる『Lonely Lonely Lonely』のファンキー・コタ・リミックスも面白かったです。

Saori@destiny:バラードだった原型が残ってなくて、初めは「え?これが『Lonely Lonely Lonely』?」と思ったんですけど、聴いていくうちにハマりました。〈アーユーレディー!?〉とか、聴いててめっちゃ上がりますよね(笑)。7分くらいあるんですけど、全然長く感じないし、組曲みたいな感じでどんどん展開が変わっていくので面白いです。

―音も歌詞も非常に濃い、充実度の高い1枚に仕上がりましたね。

Saori@destiny:今までのSaori@destinyには無い、歌い方もそうですし、歌詞もそうですし、ジャンルもそうなんですけど、全部新しい事に挑戦した、今までで一番思い入れのあるアルバムになりました。時間も一番かかったし、一番苦労したし!本当に色んな人に聴いて欲しいですね。

(interview:小林博之)


jpg


ALBUM
「WORLD WILD 2010」
2010.4.14
VUCD-60006
http://saori-destiny.com/


※このインタビューは、UNGA! No.130(2010.4.30発行)に掲載された物です
  • ライブドアブログ