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バイレファンキやファンキー・コタなど、海外直輸入のダンスサウンドをいち早く取り入れ制作されたSaori@destinyのニューアルバム『WORLD WILD 2010』。“ワールドワイド”かつ“ワイルド”な、J-electroミュージックの最新型がここにある!!




―Saori@destinyさんといえば、エレクトロを基調としたクラブサウンドでこれまでもご活躍でしたが、今回はまた思い切った内容ですね!

Saori@destiny:はい(笑)。2010年を象徴する“ワールド”をテーマにして、バイレファンキやファンキー・コタなど海外ダンスシーンの音を取り入れて。

―その辺りのジャンルって、ブラジルやインドネシアといった発祥の国でもさらに庶民を中心に盛り上がっているような特殊な音だと思うんですが。

Saori@destiny:日本人で、しかも女性アーティストでやってる人っていうのがあんまりいないじゃないですか。サブカル的にも、みんながやってない事をやるってのはオイシイかなって。

―確かに他にいないですよね。

Saori@destiny:でもこれがすごく大変だったんですよー!今までの歌い方と全然違うので。海外の女性アーティストでバイレファンキもやっているM.I.A.の歌い方なんかを参考にしたんですが、すごい低くてガラの悪そうな声だったりして(笑)。自分で出すのはとても苦労しました。

―これまでとは真逆ですもんね。

Saori@destiny:そうなんですよ!今まではサラッと、なるべくきれいな声で歌うっていうのが基本だったので、新しいヴォーカル・スタイルが「全然出来ない!」みたいな。

―歌詞も全部Saori@destinyさんが書かれているんですよね?

Saori@destiny:はい。曲のアレンジがおおよそ固まった段階でもらって、聴きながら歌詞を付けるんですけど。

―例えば『WORLD WILD 2010』なんてすごく変則的でアッパーな音で、「歌詞を付けろと言われても…」とか思いませんでしたか?

Saori@destiny:そうそう(笑)。最初はこういう曲に歌詞を付けた事ないから悩んだんですけど、発音や響きを重視してみたら他の曲よりも意外に簡単に出来ました。だから、全然意味がないって訳じゃないんですけど、それよりはノリを優先して。

―その割には、例えば〈イメージはリメイクで it's ok〉という歌詞や、英語でたたみかける所なんかも、バイレファンキというジャンルの本質を突いている気がしましたが。

Saori@destiny:本当ですか!?あんまり深く考えないで書いたんですけど(笑)。キャッチーにしたかったからカタカナ英語取り入れたりしてみました。

―歌詞の世界にも何パターンかありますよね。『エスニック・プラネット・サバイバル』や『Play』なんかはすごく過激な内容で驚きました。

Saori@destiny:現代の若者のリアルな現状みたいな。全員がこうじゃないですけど、ちょっと危ない若者の(笑)。今、携帯小説が流行ってるじゃないですか。彼氏がサイテーで、とか、ホストに貢いでる女の子の話とか、援助交際とか、そこら辺も参考に物語を作ってきました。

―自分で物語を組み立てていく作り方は多いんですか?

Saori@destiny:そうですね。自分の気持ちを書いてみた事もあったんですけど、私よく何考えてるか分かんないって言われるんですね。しかも自分でも何考えてるかよく分かんない時があるので、歌詞にすると本当に何が言いたいのか分からなくなっちゃって(笑)。物語にした方が情景も見えるし意味も分かるんです。

―(笑)。自分の気持ちを伝えたい!という時もあるんじゃないですか?

Saori@destiny:でも、こういう状況だったら私はこう思うだろうなっていう部分はどの曲にも入ってるんです。例えば『I can't』は初めて失恋の歌詞を書いた歌なんですけど、レコーディング中も歌ってると辛くなってきて、泣きそうでしたもん(笑)。

―言われると、歌い方にもそんな雰囲気が感じられました。

Saori@destiny:そうなんですよ!今までの『JAPANESE CHAOS』とか『sakura』とか、全部抑揚を付けずに、感情を込めずにサラッと歌っていたんです。でも『I can't』では歌い方を変えてみました。もう感情をめっちゃ出して!

―DJ JET BARONGによる『Lonely Lonely Lonely』のファンキー・コタ・リミックスも面白かったです。

Saori@destiny:バラードだった原型が残ってなくて、初めは「え?これが『Lonely Lonely Lonely』?」と思ったんですけど、聴いていくうちにハマりました。〈アーユーレディー!?〉とか、聴いててめっちゃ上がりますよね(笑)。7分くらいあるんですけど、全然長く感じないし、組曲みたいな感じでどんどん展開が変わっていくので面白いです。

―音も歌詞も非常に濃い、充実度の高い1枚に仕上がりましたね。

Saori@destiny:今までのSaori@destinyには無い、歌い方もそうですし、歌詞もそうですし、ジャンルもそうなんですけど、全部新しい事に挑戦した、今までで一番思い入れのあるアルバムになりました。時間も一番かかったし、一番苦労したし!本当に色んな人に聴いて欲しいですね。

(interview:小林博之)


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ALBUM
「WORLD WILD 2010」
2010.4.14
VUCD-60006
http://saori-destiny.com/


※このインタビューは、UNGA! No.130(2010.4.30発行)に掲載された物です