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手島いさむ 「SQUEEZE」 インタビュー

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泣く子も黙る国民的バンド“ユニコーン”のギタリスト“手島いさむ”が、セカンドソロアルバムをリリース!アグレッシブなロックサウンドから、ポップでメロウなヴォーカルナンバーまで、Tessyアニキの様々な魅力が詰まった濃密な1枚!


―最新作の『SQUEEZE』、前作のソロアルバム『Rising』をさらに進化させて、密度をすごく濃くしたような充実感のあるアルバムですね。

手島いさむ:そうですね。なんか1曲1曲ちょっと詰め込み過ぎたかなっていうくらい(笑)。もうちょっとね、スカスカな方がいいんですけど。ギターを聴かせるためにはなるべくシンプルな方がいいので、普通にTV見ながらとか、洗い物でもしながら聴けるぐらいが本当はね。

―その分とても満足感の高い内容ですよね。構想はいつ頃からあったんですか?

手島いさむ:年明けに一度ユニコーンで集まった時に、今年の活動をどうするかという話が出たんです。それで、去年のように濃密にやるのもいいけど、今年は少しのんびりやるかみたいになったんですね。「動くならどんどん動いてもいいんじゃない? どうせヒマだしな〜、俺も」なんて言ってたんですけど、そしたら奥田君が「ユニコーンやってない時はソロやってるんだよ」って。そこでハッと気が付いたんです。「そらそうだわなぁ」と。

―そこでですか(笑)。

手島いさむ:そこでソロに対する決意のような物が固まって。

―なるほど。タイトルの『SQUEEZE』は“絞り出す”というようなイメージでしょうか?

手島いさむ:そうですね、絞り出す感じ。ユニコーンやってる僕が普通とすれば、ギュッと絞ったらこんなのが出て来たよっていう、アナザーサイドというかね。自分のエゴに特化した所。まぁ音楽ですから人が聴いてなんぼな所があるので、聴く人に委ねた時に色々感じてもらえる物がいいなという事も考えて作りましたけど。

―決まった曲の作り方というのはあるんですか?

手島いさむ:いや、リフから浮かぶ物もあれば、ドラムマシンを走らせながら作っていく物もあって、その直前まで見てたTVとか、お風呂に入った時に浮かんで来る物とか、色々あるんですよ。それをモチーフに。例えば1曲目の『sometime wild』だったら、アメリカンな感じで疾走感もあって、ハードなんだけどどこかニヤけてるっていうイメージ。でもそこは聴いてる人に委ねて映像を色々思い浮かべてもらいたいんですけどね。歌詞が付いてるとそれは出来ないから。インストゥルメンタルの良い所は情景を自分で想像出来る所なんで。

―続く『strom strom』もさらに激しいサウンドですよね。しかもこの曲、ドラムスに川西さん、ベースにEBIさんが参加されてるんですよね!

手島いさむ:そうなんですよ。偶然そういう組み合わせになってしまいまして。「これとこれは川西さんに叩いてもらうのがいいよね!」とか「このベースはEBIに弾いてもらおう!」みたいなね。

―偶然にしては豪華過ぎですよ!しかし、リズム隊がそのお2人でギターがTessyさんって。

手島いさむ:プチユニコーンみたいな(笑)。でも音はちょっと離れててね、もしユニコーンでやるとしても余興の部分なんですよ。昔ファンクラブのイベントがよくあって、メンバー5人でシャッフルしてね、民生と阿部君のフォークデュオがあったり、僕と川西さんとEBI君の3ピースのバンドがあったりね、ジミヘン的なというか。そんな時の事をちょっと思い出したりもしましたね。決して売れ線ではない、ロックの激しい部分というか。

―『shake the world』なんかもタイトルからしてロックンロール全開で、ひとつの山場になってると感じたんですが。

手島いさむ:ちょっと大袈裟かなとも思ったんだけど、ワールドはワールドでそれぞれあるんじゃないかな、なんて思って。東武ワールドスクエアなのか、コスモワールドなのか。

―単純に「世界中をシェイクしてやる!」みたいな意味ではないんですね(笑)。しかし曲の方はギタリストの本領発揮というか。

手島いさむ:いわゆる僕の中の8ビートのロック。こういうのだったらいくらでも作るよ!っていう曲ですね。ただ難易度的には中程度なんですよ。今回「このギターは何十年練習しないと!」みたいな曲はないんです。全部が聴き取れて誰にでも分かりやすい、ギター始めた人が「なんとなく出来るかな」って思えるような、きっかけになってもらえるといいなって。でもやってみると実はパワーいるっていう。

―確かにそう簡単じゃないですよ。その絶妙なバランス感覚も魅力になってるんですね。

手島いさむ:そうなんですよ。僕もどっちかというと日本の中で新進のギタリストではないので。ブルース・ロックからハード・ロック、ヘヴィーメタルとか、そういう要素をちょっとずつ吸収して来た世代なんで、じゃあその中で「自分っていうのは何なんだろう」って考えた時に出た答みたいなアルバムなんですよね。

―後半には歌モノが4曲も収録されていますが。

手島いさむ:調子に乗って歌を歌ってしまいました(笑)。ユニコーンが再結成して、『オッサンマーチ』って曲を1年間ずっと色んな所で歌って来たので、どのくらい声が出るのか自分の中で目安がついたんですよ。最低クオリティがちょっと上がったから踏み切れたって感じです。『少し変です。。』を最初に決めたのかな。こんなのがあったらいいよねって。

―自己紹介的な歌ですね。

手島いさむ:“少し変です”っていうのが前からのテーマでね。20代30代っていうのは、正しいとまでは言わないけど、自分は普通だと思ってたんです。だけど、ユニコーンが再結成して集まって、あらためて「自分は普通じゃないかもしれない」って思えた(笑)。みんな言うんですよ。民生は民生で「お前ら4人おかしいよ!」って。お互いがお互いの事を変わってると思ってるので。いや、本当に常軌を逸したおかしさじゃなくて、ちょっとクセがあるというか、品行方正で絶対に間違いも犯さないっていう人間はなかなかいないと。それを認める事が出来なかったというかね。「俺は普通だよ!お前らがおかしいんだよ!」って思ってたんだけど。

―いち国民の立場から言うと、ユニコーン自体が変わり者の集まりという印象もありますが…。

手島いさむ:そう見えるかも知れないけど「聴いてるあんたもかなり変わってるからね」っていう事なんです(笑)。だから僕が日常で思ってる事とか、こういう所が少しおかしいのかなっていう所を並べてみたという。

―最近の心境が語られているんですね。

手島いさむ:はい。昔はね、ギターでも格好良くスタイリッシュに弾きたいと思ってたけれども、ギターってのは弾いてない人が持つととんでもなく格好悪く見えるんですよ。で、自分の写真や映像を見てみると、20代の頃よりは板に付いて来てる。ギタリストっていうのはみんなそれなりの形があるじゃないですか。上手い人はやっぱり美しい。楽器弾きはみんなそうですよ。逆に言うとそれ以上の事は俺、出来ないなと思って。似合ってるか似合ってないかで言うと似合ってるんだろうけど、それが物凄く格好良いかっていうとそういうワケじゃないし、みたいに、だんだん冷静に見れて来たというか。まぁ個性というものを肯定した曲でありますね。

―先程『オッサンマーチ』の話が出ましたが、今作の歌い方はまた随分違いますよね。

手島いさむ:ユニコーンはガーン!という感じなんですよ。いつでもワ−っとみんなが全力を出し切る。ソロではリラックスして「自分はこういう感じなんだよね」っていうのが出せる。

―次の『around again』なんかはシリアスな内容が対照的でもあり、でもやはり共通点もあるというか。

手島いさむ:そうですね、ちょっと真面目に。「もう一回旅を始めますよ!」っていう。

―どちらも20、30代を乗り越えて出て来た味わいがあるなと。

手島いさむ:でないと出せないものだとは思います。だからいわゆる携帯でダウンロードして聴くみたいな世代にはちょっと説得力に欠けるかなぁと思うし、ヒットチャートには出て来ないような曲だけど、こんなロックの人もいるんだよっていうね。昔のCCRの『雨を見たかい』とか、そんなようなテイストというか。いわゆる僕の牧歌的な一面、『自転車泥棒』とかの流れの作風ですよね。

―こちらも川西さんがドラムを叩く『2人の休日』は、EBIさんのコーラスも聴き所ですね!

手島いさむ:EBIはまぁベース弾きに来たので「じゃあコーラスもやってもらお〜」つって(笑)。

―なんて豪華な!

手島いさむ:EBIと川西さんに関しては電話一本で「こういうこと出来ないかな?」なんて言うとパッパッと決まるのでね。阿部君を誘おうと思っても、ちゃんといいグランドピアノ用意して、調律してなんていうと大掛かりなので。奥田さんはまずマネージャーさんにスケジュールから確認しなくちゃいけない(笑)。でも次作る時に「どうしても必要だ!」と思ったらお願いする可能性もありますよ。

―そしてラストはアコースティックなインスト・ナンバー『deep night』で締められてますね。

手島いさむ:これはガットギターをYAMAHAにもらったんで(笑)。メロディーを純粋に歌のように作った曲ですね。聴いた皆さんが、自分なりの詞を考えてみてもいいし。まぁ、おやすみのテーマです。

―ラストまで本当に充実した内容だと感じました。

手島いさむ:ちょっとがんばりましたよ、今回は。前作は自分がその時感じていた事をスケッチしたような内容だったんですけど、今回の『SQUEEZE』では割としっかり油絵を描いたなっていう。

(interview:小林博之)


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ALBUM
「SQUEEZE」
2010.6.16
LDRT-004
タワーレコード限定販売
http://tessy.tv/


※このインタビューは、UNGA! No.131(2010.6.30発行)に掲載された物です

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